■淡い愛と熱い恋 2


翌日の寅の刻下がり。永泉は、いつものように今上帝と仏の道について語らうため、凛とした雰囲気の清涼殿を訪ねていた。
一般の者は、貴族ですらあまり出入りのない帝の私邸とあって、数少ない永泉の安心できる場所のひとつだった。
兄との帝位をめぐっての争いで、御室皇子の事を目の敵としてみている公卿も多い。
本来ならば、永泉が私邸としていてもおかしくない清涼殿を、帝に何からお話しようか考えながら、軽い足取りで帝の私室へと向かう。

「おはようございます、永泉様。」
「おはようございます、友雅殿。」

西の廂(ひさし)を歩いている時、背中のほうから、甘い声で呼び止められて、永泉は足を止めた。
振り向いてみると、そこには、長身で京のプレイボーイとして老若男女の間で歌われている、五位の左近衛府少将・橘友雅が、
いつものラフな着こなしで頭を下げていた。たいていの貴族たちは、私腹を肥やして出世することを第一と考えるため
、帝との謁見では、ゴマをするものがほとんどだった。
しかし、この男は、橘氏という政権争いの中枢から少しはなれたところからの見解を、帝と私欲を伴わずに話し合える数少ない貴重な人物だった。
永泉も、もちろんそのことを知っているので、気軽に話が出来るし、心の内を見られても安心できる。

「昨日は、あれから大丈夫でしたか?」
「ええ。友雅殿のおかげで安心して、自宅に帰ることが出来ました。ありがとうございました。」

花鳥風月のどれもが劣ってしまう光景にほほを染める女房たちがいるであろう御簾の前や、
二人のことをよく思っていないものたちと幾度かすれ違って、ようやく帝の下へたどり着いた。

「主上(おかみ)。橘友雅、ただいま参上いたしました。」
「御室皇子も参りました。」

二人は、書に目を通している帝の前に膝をついて一礼する。
「おお。待っておったぞ。そなたたちが、いつになったら参内するのか楽しみにしておったのだぞ。

さあ、そんなことをしておらずに、早くこちらへ入りなさい。」

帝は、やっと二人が参内してきたのに喜びの色を見せて、御簾の内へ入るように命じた。
御簾の内は、永泉のように、皇族の血を引くものならば問題ないのだが、普通は、皇族以外は入れないところ。
しかし、友雅のことを信頼しきっている帝は、出会って一月も居ないうちに御簾の内に入ることを許していた。
そんな帝の心を汲み取っている友雅は、御簾の内にいるときは、一人の貴族ではなく、帝のご意見番として入ることを、常に心がけているのだった。

「昨日は、何も変わったことはなかったか?」

帝は、永泉に心配そうに尋ねた。友雅は、何も言わずに二人のやり取りに耳を傾けている。

「…。大納言の血筋の方に、車の中で強姦されました。」
「その時の状況がどのようなものだったか、お前の口から話せるか?」
「…はい。」
「話せるところまでで構わぬ。話してみよ。」

永泉は、泣き出しそうな顔を俯けて、淡々と兄に話し始めた。

「あれは、友雅殿にお会いするため、大内裏を訪ねていた時のことでした。
庇より寝殿のほうに入りましたら、大納言殿に声を掛けられまして…。
珍しい絵巻物が手に入ったとおっしゃるのでついて行きましたところ、3,4人ほどおられまして…。その後は、そのまま車の中へ…。」

帝は、永泉の兄として自分の近くの大内裏で、しかも、ある程度信頼を置く大納言の手で、
自分の大切な弟の体を弄ばれていた事実に、大きく肩を落として脇息にもたれかかった。

「そうか…。それは、辛い思いをしたな。よくぞ助けてくれた、友雅。」
「いえ。偶然自邸の近くでしたので。」
「貴族にしろ、庶民にしろ、民の心が廃れて来ているのは、私の政が行き届いていないのが原因だ。すまぬ、永泉。」

帝は、脇息にもたれていた姿勢を正すと、永泉に頭を下げた。

「そんな。兄上がお誤りなることではございません。私の不注意によって起こってしまったことなのですから。」

永泉は、帝の謙虚さにいつもいつも助けられていることを、誠実に受け取っていた。

「すみません、主上。今日は、僧正様に御呼ばれしていますので、本日は退散いたします。
何か御用があれば、いつでも自宅か御室寺のほうに御使いや文をお寄越し下さい。」

永泉たちは、静かに礼をして音もなく静かに退室していった。

「永泉のこと、本に礼を言うぞ。」
「いえ。当然のことをしたまでですよ。」

二人きりになった友雅と帝は、静かに会話を再会する。帝は、大きなため息混じりで、友雅に改めて礼を言った。

「ところで、友雅、私を抱いてはくれまいか。」
「欲情してしまわれたのですか?数ヶ月も前に別れた男に。」
「そうではない。そなたのぬくもりが欲しくなっただけだ。かまわぬか?」
「あなたのご意志に背ける者は、この都の中にはおりませぬ。」

友雅は、帝を傷つけないように、そっと衣服を剥ぎ取っていく。
帝も同じように、熱い口付けを交わしながら、ゆっくりと友雅の着物を脱がしていく。
まだ外は日の光が十分に降り注がれているにもかかわらず、二人は、熱くて甘い行為へと沈んでいく。
友雅の言うように、付き合っていた二人は、数ヶ月前に綺麗に別れていた。
付き合っていたのもほんの3ヶ月程度だったが、二人とも、一日2回は必ず体をあわせていたほどだった
。それ故、友雅も数ヶ月たった今でも、感じる場所や羞恥心を煽る体勢などは、瞬時に思い出される。
それは、相手も同じらしく、すぐに、一番感じる体勢を自発的にとってくれる。

「欲求不満で、夜も眠れなかったとか?」
「そなたとの行為を知ってしまったものは、何人であれ、欲求不満になるものだ。」

帝は、友雅の大きな手のひらを自分の中心に導くと、軽く握らせた。
京の都で一番清らかな中心をつかんでいる友雅の手は、優しく動き始めて、帝を少しずつ絶頂へと導いていく。
まだ、皇子を持たぬ帝でも、女性の相手をすることもあるだろうに。
友雅は、心の中を、そんな言葉が掠めていったが、口には出さずに、指の動きを少し加速させた。
帝の体は何一つ変わっておらず、きつく抱きしめてしまったら、簡単に折れてしまいそうで、熱い抱擁の変わりに熱い口付けを交わす。
帝の若木が成長してくると、ぬるぬるとしたものが、若木の先端から零れ落ちてきた。

「ああ…。っ…、感じる。…出して、かまわぬか…?」
「…もう、ですか?」
「ああ。」

久しぶりに五感で感じ取る帝の懇願の声と快感に涙のにじんだ表情は、言葉に表すのが難しいほどに色気を帯びていて、
友雅は、本気で感じていることを再確認した。感じていなければ零れることもない甘い声を聞いた時点で、
抑え切れない帝の心のうちはわかっていたが、妖艶な表情や中心の状況を見て、先ほどまで抱いていたものが形となった。

「主上、最後までやってしまって、よろしいのですね?」
「かまわぬ。早く、そなたの性器が欲しい…。」
「なら、私のことをどれぐらい欲しいか、私に示してください。」

友雅は、限界にまで成長している帝の若木から手を離すと、帝は、自発的に行為を望み始めた。
友雅は、心の通っていない下衆のような行為は好まず、情熱的な行為が好きだった。
それゆえに、後ろから攻めることも、若木の根元を縛ることも、自分からはしない。
相手も自分も、我慢をせずにイキたい時にイク。それが、友雅のモットーだった。
帝は、友雅の言葉を受けて、膝立ちになる。細い腰に両手を当てて、友雅に、屹立している自分の性器を見せ付けるような格好を取る。
赤くなった顔を少し背けながら、かすかに震えている声で、友雅に懇願し始める。

「友雅、私のこれを、思い切り吸い上げてはくれまいか。…開放の時を待ちわびて涙をこぼしているのがわかるだろう…?」
「私としていない間、ご自分でなさっていたのなら、その時の様子を私に見せてください。
あなたが、どのように自慰をなさるのか、知りたいのですよ…。」

このような時の友雅の要求は、かなり命令に近い。
帝は、それを承知で、膝立ちの姿勢から、長座になって、X字型に脚を開く。
わずかに触れただけでも雫が零れ落ちてくる中心を気にしながら態勢を整えると、友雅に見せ付けるように再現が始まった。
ほっそりとした長い指を、あまり大きくはない若木に絡めて扱き立てていく。

「あ…、友雅。…そなたのものが、大きなそなたのものが、今すぐ欲しい…。」

友雅は、あられもない姿で自分の名を呼ぶ帝の中心に視線を集中させて、全く触れない愛撫をする。
今の彼にとって、視姦される事も快感だった。
次々にこぼれてくる液の量は次第に増えてきて、御簾の内の柔らかな畳にシミを作りそうになっている。

「おっと。こんなにおいしそうな汁を、床にこぼさないでください…。」

友雅は、帝の指の間から伝う快楽の証をなめ取りながら、徐々に先端のくぼみへと舌を進行させていく。
快感を生み出す舌の動きに我慢できなくなってしまった帝は、絡めていた指をはずし、背中を畳に任せて舌の動きに翻弄されている。
巧みに動く舌は、帝の若木を余すところなくしゃぶり終えると、ご褒美のつもりだろうか、
一番弱くて雫を生み出し続けているくぼみをきつく吸い上げて、やっと射精を許した。

「大丈夫ですか?」

放心状態で畳に体を預けている帝に、心配そうに声を掛けた友雅は、
涙にぬれた帝の頬をなぞりながら、丁寧に、体についている液をぬぐい取る。

「もう我慢できぬ。早く、私の中に来い。」

帝は、友雅に両腕を突き出して更なる快感を友雅に要求し始めた。

「あまり誘われると、私の抑えも、もたなくなってきますよ。」
「かまわぬ。本気で攻め立てて欲しい。」
「御意。」

友雅は、帝の要求を飲み込むと、性器の後ろにある蕾に手を掛けて、
限界の大きさまで成長している自分のを入れても大丈夫なように、じっくりとほぐしていく。
二人の行為が一息ついたのは、日が最も高いところを通る頃だった。




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