■淡い愛と熱い恋 8


翌日、土御門の天真の部屋に集まった、天真・永泉・友雅・頼久は、早速昨夜のことを話していた。
頼久は、友雅の解説つきで、いつになく神妙な顔をして話に聞き入っている。

「それで、私が泰明殿をお連れしたときには、二人の世界に入っていたと。そういうことだよ。
あの時は、声を掛けるべきか否か、迷ってしまってねえ。君ならどうしていたかなあ、頼久。」
「私なら、一筆残して、先に屋敷に帰りますか…。」
「なるほどねえ。二人の世界を壊してしまわないように、か。君らしいよ。」
「いえ。もし、私が友雅殿に夢中になっているときでしたら、第三者に邪魔されたくはありませんから。」
「ありがとう、頼久。」
「おい、今はこっちの話だろう?あれから、泰明に口止めするように説得するの、大変だったんだぞ?」
「でも、泰明殿を呼んでくるように仕向けたのは、君だろう?」
「あれは、俺とお前が、珍しく考えてることが同じだったから!」

三人がにぎやかに、ああだこうだと話しているのを、永泉はやわらかく微笑んで見つめていた。
久しぶりに訪れる天真の部屋に、何か思っていることでもあるのだろう。

「友雅殿、私はこれで失礼いたします。お3方だけで話したいこともおありでしょうし。
神子殿が怨霊退治についてきて欲しいと、仰せですので。」
「そうか。気をつけていっておいで。」

俗に言う、行ってらっしゃいキスを交わすと、頼久は、ひとつ頭を下げて部屋から出て行った。
頼久の動いた後には、天真とは違う梅花の香りが残っていた。

「友雅殿は、出勤なさらないのですか?」
「ええ。今日は物忌みだと言って、休暇を出しているのですよ。」
「ズル休みかよ。」
「大人の事情、と言って欲しいな。」

それじゃあ、俺と永泉がヤろうと思っても出来ねえじゃねえか。
天真は、明らかにそんな色を見せている目で、友雅をにらみつけてやった。
友雅も、その瞳の意味に気づいたのか、さわやかに笑って見せる。

「ところで、お二人はまだなさらないのですか?昨夜は、別々でお休みになったのでしょう?」

永泉は、意味が分からないと言った表情で、友雅を見る。
その反面、今にも怒鳴り散らしそうな天真が、とんでもない形相で友雅をにらみつけている。

「友雅、てめえ!今すぐ帰りやがれ!!んで、今すぐ仕事に行け!
何なら、永泉の兄貴に、お前がズル休みしたこと、チクってやろうか!?」
「やれやれ。また意味の分からない言葉ばかり並べ立てて。主上なら、私が欠勤していることぐらいご存知だよ。
今日欠勤しろと仰せられたのは、主上だからね。」

友雅のその言葉に、天真の瞳がついに据わり始めた。

「昨日の一件を文にしたら、褒美として休暇を頂いたと言うことだよ。私は何か、いけないことをしているかな?」
「そうじゃなくって!あおってんじゃねえよ!お前なんかに言われなくても、
俺たちのやりたいときにやる!それで、何が悪いんだよ?」
「…今回ばかりは、見ておきたいのだよ、君たちがどんなふうに抱き合っているのかを。」

少し声色を落とした友雅は、顔を真っ赤にしている永泉にも視線を配る。

「…何のためだよ。」
「主上に報告する時、私が曖昧な返事をしてしまっては、君たちの今後につながることだからねえ。
ここでしっかりと、君たちがどれくらいまで出来上がっているか、見届けておきたいのだよ。かまわないだろう?」

すでにやる気を見せている友雅は、着物の袷をいつも以上にはだけて、帯を緩め始めている。
天真は大きくため息をつくと、永泉に軽く耳打ちをする。

「いつもどおりにしてればいいから、友雅のことは気にすんな。いいな?」
「はい、大丈夫です。友雅には、していただいたことがありますから。」
「…いきさつは?」
「…後ほどお話いたしますから、今は…。」

今真実を話してしまうと、天真が友雅に掴みかかりかねないと思った永泉は、
言葉を濁すために袈裟を几帳にかぶせた。続けて、帯もほどく。
天真よりも多くの枚数を重ねて生きている二人は、脱ぐのにもそれなりに時間がかかるし、
シワにならないように几帳へかけることも忘れない。

「君は脱がないの?」

タンクトップに2枚程度しか着物を合わせていないからすぐに脱げるといっても、
一枚も脱ごうとしない天真に、何も纏っていない友雅が非難の声を漏らす。

「俺から脱がなくても、いつもこいつが脱がしてくれる。俺は無理やりこいつと体を重ねたいわけじゃない。
こいつが無理やりやられるの、トラウマに思ってることぐらい知ってるから。」

教則にもたれかかっている友雅を尻目に、天真は永泉が脱がしにかかってくれるのを待つ。
永泉もそれを知って、足早に下着姿なると、天真の着物を脱がしにかかった。
こういうときにだけ、こちらに下着と言う文化がないことに感謝している天真は、いたずらに永泉の弱点を探り始めた。
弱いところを探られているのと、それを見る友雅の視線のせいで、
いつもより成長するスピードが速い。天真は、面白がって手の動きを早める。

「天真、殿…っ。そんなにすると、着物が…、汚れてっ。ああぁ…。」

永泉は、自分で自分の着物を汚してしまわないかを気にしながら、天真の動きに夢中になっていく。
もはや、お互いがわずかに衣を纏っていることなど、永泉の脳裏からは消え去っているらしい。
友雅は、しきりに着物を気にする永泉のために、背後からそっと薄い衣を剥ぎ取ってやった。
白い衣の中からこぼれ出たのは、天真と性別も弱いのほども同じ生き物とは思えない肉体だった。
しかも、その肉体には不釣合いな、男の象徴も見受けられる。
友雅は、薄暗い図書寮では確認できなかった生きている芸術品を、
日の光の下でしっかりと視線で品定めすると、しなやかな背中をゆっくりとなで上げていく。

「あ…。」

触れるか触れないかの微妙な感覚に、永泉の背中は敏感にもゆっくりと反り、更なる快感を求めてくる。

「昨日は、家に帰ってすぐに寝られたのか?」

意地悪な口調で天真がたずねるのに、永泉は、快感に耐えながら力なく首を横に動かす。
まだ、行為は序章だと言うのにガタガタと震えだしている永泉の腰は、
永泉の体重を支えきれずに、ゆっくりと床へ体を任せた。
そうなった永泉の体に、4本の腕が器用に絡み合ってくる。




7に戻る

9に進む


戻る



Copyright(c)2003 Kurea Kusakabe (webデザイン風使いのフォウ) All right reserved.
当サイトの作品の無断複製、転載、配布等全ての著作権侵害行為を固く禁止致します

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送