■心の色 天真サイド


俺は、今日、3ヶ月も顔を合わせていないイノリと、俺たちを合わせる手はずを整えてくれたあかねと3人で、近所の祭りに来ていた。
最初は、イノリが高校に入る勉強をしてるって言うから、それについて話してたけど、寺に着いてから、それどころじゃなくなった。
露店ばっかり並んでる参道から、何気に視線をはずして右手のほうを見ると、見知った人影を見つけてしまったんだ。
その人影は、ちょっと離れたところにいたけど、それが誰か、すぐに分かった。
格好は、京にいたときよりもラフで、藤色の、花火の模様がついてるの浴衣に、いつもより落ち着いた色の草履。
ないに等しい肩には、濃い紫色の髪がかかってて、提灯や電灯の灯りと相俟って、すっげー綺麗だ。
こっちに背中を向けてるけど、少し内股な歩き方とか、うちわで扇ぐときの微妙な仕草とか…。あいつ以外に考えられねぇ。
あかねに一言入れた俺は、一目散にその人影の元へ走った。
まあ、イノリとあかねの中を知ってて、窮屈だったってのもあったけど、やっぱ、創造だけじゃ納得いかねえこともある。
思いっきり走っていって、そいつの肩を掴んでこっちを向かせる。

「永泉!」

振り向かせたヤツの顔を、一瞬で確認すると、そのまま、唇を重ねてやった。
最初は、驚いたような顔で俺の事を見てたけど、キスしてる長い間に、蕩けるみたいな顔になってきて、
仕舞いには、目を閉じて俺にしがみついてきた。柔らかい髪の毛、思いっきり抱いたら壊れちまいそうな体。
嗅ぎ慣れた香の匂いで、そいつが、京の都に残してきた法親王の永泉だと、確信した。

「天真殿、お会いしたかった…。」


キスが終わって、口を離すと、俺の浴衣の併せのところに顔を埋めて、甘い声で、俺の名を呼んだ。
京にいたときは、毎晩のように永泉を抱いてたし、甘い声も、普段聞いたことのない声や姿も、俺の前に曝け出してた。
でも、3ヶ月も離れてたそんな永泉の態度に、一気にその時の記憶がよみがえる。
だいたい、永泉の家の塗籠の中で、明かりは全く灯さずにやってた。
そん時の、闇の中で妖艶に動く白い永泉の体とか、感じるところを突くたびに散る紫の長くてしっとりしていて良い香りのする髪とか。
どれも、体でも心でもはっきりと覚えてるから、すぐにそういう方向に思考が走る。
二人とも、何も喋らないまま、寺の池のほとりを歩いていく。
わざと喋らなかったんじゃなくて、何も言わなくても、相手の雰囲気とかキスした時の感覚とかで、
お互いがどういう状態か、お互いが分かってる。時々灯りが漏れてきて、永泉の顔がはっきり分かる。
ちょっと、赤くなってて、こわばってる肩とかから、こいつが緊張してるのが分かる。

「お前、どうして俺がここだって、分かったんだ?」
「八葉の木の気を探ったのです。こちらの世界に来ていらっしゃる木の気は、あなただけですから。」

時々、ぜんぜん続かない会話を交わすけど、あんまり話をするとすぐにヤりたくなっちまうから、極力そっち方面の話は控える。
しばらく歩いて、車も人もあんまり通らない裏通りに出た。
このあたりは俺の知ってるところだから、抜け道とか近道とか、よく知ってる。
でも、このままこいつを連れて家まで行くのも、きっと親に怪しまれる。
俺は、思い切って表通りに向かった。表の大きな道はそのまま最寄り駅の駅前につながってる。
俺らの使ってる線では大きい駅だから、当然駅前も遅くまで賑わってる。俺は、そんな賑わってるところの一軒に入った。
その店は、俺のバイト仲間が掛け持ちしてる店で、直接行くのは今回が初めてだ。
普段はあんまり近づかないけど、今回は事情なだけに、やむを得ず転がり込んだ。その理由は、ここが、俗に言うラブホテルだからだ。
店の外観や内装から見て、ラブホテルの典型みたいなところだったから入るのに躊躇したけど、
上目遣いで見てくる永泉の瞳にやられて、ゆっくりと中に入って、友達のよしみってヤツでいい部屋に入れてもらった。

「ご自宅にお戻りにならなくて、よろしいのですか?」
「ああ。友達と騒ぐから、京は帰らねえって、おふくろに言ってきたから。お前は?誰か、こっちにお前が居ること知ってんのか?」
「はい。兄上と、友雅殿と、藤姫は、知っております。」
「なら、大丈夫だな。」

ここに着くまでに、横目でこいつのこと、何度も見てたけど、やっぱ、めちゃくちゃかわいい。
時々上目遣いで俺のこと見てくるのとか、小走りで俺の歩いてるのに追いついて俺の手を握ってくるのとか。
途中で、ヤバくなるかと思ってた。でも、二人きりの空間に入ったら、後は俺のモンだ。
少し戸惑ってる永泉の手に、俺のを握らせてやる。もちろん興奮しきってるから、ちっともやわらかくない。
永泉は、驚いて、手を引っ込めようとするけど、ちょっとサドっぽく、逃げられないようにする。ごめんな、永泉。

「天真殿!?」
「なあ、早くヤろうぜ?こいつ、このままにしてたら、暴れ出しちまうからさ。」

永泉は、外見は戸惑って見えるけど、きっとやる気満々なんだろうな。自分から浴衣脱いで、俺のを銜えて来る。
めったに積極的に攻めてこないけど、こうやって自分からしてくる時は、自分の体が熱くなり過ぎててどうにも出来ない時か、
寂しい気持ちが積もり過ぎて自分を抑えられない時だ。今回は、後者だと思う。
こういうときは、思いっきりかわいがってやるのが、一番良い。

「俺がいない間、京で何かあったのか?」
「…天真殿が現代に帰ってしまわれてから、東宮の地位に戻っておりました。」
「還俗したのか!?」
「はい。ですが、本来の還俗とは違い、執務だけを執り行って、ほかのことには関与しない、
という特例を、兄上が作ってくださったので、少し違いますが。」
「…強くなったな。」
「ありがとうございます。自分に自信を持つきっかけを作ってくださった天真殿に、心から感謝いたします。」
「俺がきっかけだったかも知れねえけど、それを押し通してそこまでいけたのは、お前の力だろ?」
「…天真殿は、変わらずお優しいのですね。いつも、あなたのことを思い浮かべながら執務に励んでいたのですよ?」
「んじゃ、ご褒美を上げないとな、将来有望な東宮様に。」

永泉の言葉が嬉しくて、俺は、本格的にやってやろうと浴衣を脱いだ。
臨戦態勢名折れの体を見た永泉は、まっすぐ立って俺に抱きついてきた。
ちょっと動いただけでも、黒方の香りがして、余計にそそられる。
京にいたときはあんまり気にならなかったけど、こいつらは、五行属性がどうとかで、半年に一度しか髪を洗わないし、
1ヶ月に一度くらいしか風呂に入らない。こっちの世界で思いっきり抱くなら、極上に綺麗な体を抱いてやりたい。
だから、俺は、抱きついてきた永泉を、そのまま抱き上げて一緒に風呂場に入った。
綺麗に磨き上げてあるバスタブに、3つの蛇口からひねって湯をためていく。
バスタブの大きさと蛇口の勢いからすると、15分もあればいっぱいになるだろう。
さすがにラブホテルなだけあった、俺と永泉が二人は言っても余りそうな大きなバスタブだ。
永泉は、京にあるのとは全く違う浴槽を、珍しそうに見てる。そんな、何気ないしぐさも、今じゃ、そそられる以外に思い浮かばない。

「体洗ってやるから、それに座れよ。」

よく旅館とかホテルの大浴場に置いてある、小さな木製の浴槽用のいすを持ってきてやると、
永泉は行儀よく、両手両膝をそろえて、ちょこんと座った。久しぶりに見る永泉の背中は、いつも以上に細く見える。壊しちまいそうだ。
シャワーをひねって、湯加減を見ながら永泉の背中にかける。初めてのシャワーの感覚に、細い背中がかすかに弾く。

「熱くないか?」
「はい。」

お互い、あんまり喋らずに、永泉の体を綺麗に洗っていく。
俺しか触ったことのない場所も洗っていってやる。
でも、俺がやってるんじゃないのに、永泉の体は準備万端になってる。
直接いろんな場所に触ってるのもあるかもしれないけど、だんだん荒くなってきてる永泉の息が、俺の心の中をくすぶってくる。

「俺たちがこっちの世界に帰ってから、自分でやってたのか?」
「…っ、はい。してました…、ひとりで。」
「強姦は?」
「されました、幾度も。」
「場所は?相手の人数は?お前の護衛役は、なにやってんだ?」

永泉が、俺に強姦の事を聞かれるのが嫌いなのは、十分知ってた。
でも、眉間にしわを寄せて、心底気持ちいって顔するから、相手のことを分かってて煽ってやる。

「そんなこと、お聞きにならないでください。」
「どうしてだ?俺に聞かれたくないことでも、あるのか?」
「いえ…。」

永泉は、イスから立ち上がると、俺のほうに向き直った。
泡だらけの永泉は、日本史の資料集に載ってた、どこかの屏風絵にかかれてた羽毛をまとう女みたいで、掴んだら弾け飛んじまいそうだ。
真っ直ぐ見据えてる瞳も、初めて会ったときの気弱な永泉からは想像もつかないほど力強くて…。
やっぱ、都を引っ張っていく統治者の血筋なんだって、再確認させられる。
結局、その後も何も口を聞かないでお互いの体を洗いあった。
当然、お互いの体がどうなってるかも知ってたけど、何も言わなかった。
ただ、寄り添ってくる永泉の肩を、俺はやさしく抱き寄せてやったし、永泉もそれに答えるみたいに、俺の肩に頭を置いてじっとしてた。

バスルームに入ってから約1時間後、俺たちは、服を脱ぎ散らかしたベッドルームに再び戻ってきた。
ざざっと水滴を拭き取っただけだから、かすかに湿気が残ってる永泉の肌は、俺の手に吸いついてきて、かなり煽られる。
ベッドルームに来ると、その部屋が現代の寝殿だと分かったのか、永泉は、自分から俺の唇に飛び込んできた。
柔らかくてピンク色の唇は、すぐに俺の理性を剥ぎ取って、新たな快感を欲してくる。
こういうときの永泉は、俺が何もしなくても、自分から全てやってしまうことを知っている。
服を脱ぐことも、体を触らせることも、俺を受け入れることも、自分を開放するのも、全て
今は服を着てないから、ひと手間省けてるみたいだ。

「お前が一人でしてるとこ、見てみたい。」

俺が一言言うと、うまそうにほおばってた俺のから顔を上げて、足を開けて、言われたとおりの事を始めた。
指が上下するたびに、甘い喘ぎの音量が増すし、息も上がってく。

「天真、殿…。」

時々俺の名前を口にするのは、忠実に再現をしているからなのか、俺を煽ってるのかは分からない。
けど、すっげー色っぽい顔してる。
永泉の顔とそれから、絶頂が近いことが伝わってくると、我慢できなくなった俺は、刺激を続ける永泉の指を払いのけて、
喉の奥までかぶりついてやった。その瞬間、永泉の腰は大きく、俺を欲しがるみたいに動き出すし、口の中にあるのも質量を増した。
液の量も必然的に増えてくる。どんな些細な反応も、こいつが素直に感じてくれてる証拠なんだ。
俺は、遠慮なんかせずに、思いつくままに永泉を貪った。

「ああぁぁぁ―――――っ。」

少しして、泣きそうな甘い声を上げながら、俺の口の中に感じていたことを形にした。
俺は、もちろん躊躇なんかしないで、全部飲み干した。
肩で息をしてる永泉は、開放の余韻を味わう暇もなく、俺のに一生懸命奉仕を始めた。
ぎこちない動きに、余計そそられる。永泉の口に合わせて、俺は、永泉の蕾をほぐしにかかった。
喘ぎを堪えながら俺のを銜えるこいつの顔が、すっげーイイ。

「うあ…っ。」

そんなことを思ってたら、俺もいつの間にかイッてた。
俺も、心底こいつのことを想ってるんだって、改めて思った。
その後は、あいつが俺の上に座ったり、俺の中触ったりしてきたけど、全く嫌じゃなかったし、気持ち悪くなんてなかった。
むしろ、めちゃくちゃ気持ちよくて、やめるなって、言ったくらいだった。
だって、こいつがここにいられるのは、そんなに長くないことは、知ってたから。

次の日の朝、俺たちは喫茶店でモーニングを食べた。
周りの客は、俺たちのことをこそこそ言ってたみたいだったけど、
あの雰囲気じゃ、永泉のことを女だって思ってくれてたみたいだから、不幸中の幸いかもしんねえ。
それに、昨日の浴衣のままだから、余計に目立ってたんだと思う。
その後、俺は、例の井戸まで永泉を見送りに行った。
俺たちの世界と1000年前の世界をつなぐ、不思議な井戸。
最初に、京に行って帰ってきた時には壊してやりたいって思ったけど
、今から思えば、ここは、こちらと向こうの唯一の共通点なんだ。
壊してしまったら、永泉や永泉以外の向こうのやつらには、二度と会えなくなってしまう。
今は、この井戸がなくならないように、静かに見守ることにする。

「帰るんだな、京に。」
「はい。兄上や友雅殿が、待ってくださっていますから。」
「また、やりたくなったら会いに来いよ。」
「ありがとうございます、天真殿。」

俺の唇を、軽く吸った永泉は、振り返らずに井戸の中へ、京の都に向けて飛び込んでいった。
一瞬浮いた永泉が、俺には天使か妖精に見えた。

俺は、しばらくその場に突っ立って、昨日のことをゆっくり思い出していた。
あいつのぬくもり、香り、体のしなやかさ全てをじっくり噛み締めて、俺は、家に向かって歩き出した。
あいつは、俺とこういう関係になって、自分を見つけて歩き出した。
なら、俺も、あいつに会ったことをきっかけにして、何かデカいことをやってやろう。
次にあいつにあった時、胸を張って会えるように。


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