■DARK IN THE MOON 1


その日、私たち守護聖は、女王補佐官であらせられるディアさまのお招きで
昼食会へ全員参加しておりました。
「楽園」と呼ぶにふさわしいディア様の庭園で、次代の守護聖についての会話をしながら
ディアさま自らがお作りになったフルコースをいただいていました。
その優雅な昼食後、再び執務が始まる前に私は、いつものようにクラヴィスさまの執務室へ
伺っておりました。話題はもちろん、昼食会のこと。

「次代の夢の守護聖は、まだ守護聖の座を拒んでいるようですね、クラヴィス様」
「このまま夢の守護聖が空位になれば、宇宙の均衡は序々に崩壊する。
 女王陛下は、どのようにお考えか・・・・。」
「クラヴィス様・・・・。」

他の者が見れば、いつもの様子でいらっしゃるクラヴィス様が、この日ばかりは
少々憂いでいらっしゃるように、私には思われました。

「女王陛下は必ず、私たちを最善へと導いて下さいます。そう信じるより他はないと、私は思います。」
「お前は強いな」
「いいえ・・・・。もったいないお言葉です。」

他愛も無い会話が途切れると、私はいつものようにクラヴィス様ご愛用の長いすに腰掛け
ハープの弦へ指を滑らせました。すると、クラヴィス様もいつものように体を長いすにお預けになりました。
頭は、いつもピロークッションではなく、私の太ももへ・・・・。

「クラヴィス様!?」

クラヴィス様の思ってもみない行動に、指は止まり音は沈黙へと変わりました。
強い麻酔を全身に投与されたような感覚が、体を走りました。
クラヴィス様とお会いして約二年になっておりましたが、こんなことは初めてでした。

「お前は、何故私の元へ毎日訪れる?楽を奏でるためだけではなかろう?」

この方は、全てを見抜いておいででした。女王陛下の御意思も、私の心の内も・・・・・。

「あなた様のお側に、少しでも長くこの身を置くためでございます。私はあなた様のことを、
 ずっとこの聖地であなた様と初めてお会いした折よりずっと愛しく思っております。
 陛下に対するものとは異なる愛情をあなたに対して、抱き続けております。」



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